【2022年2月1日更新】図解・装飾の追加により記事内容をわかりやすく編集しました。
■第7章 組織の経済学 ゲーム理論
ゲーム理論とは?
この世の非序に多くの部分はゲーム理論で説明ができる。
ゲーム理論は経済学では1種の数理的な言語ツールになっている現状がある。
現在はマーケティング研究に応用されていたり、応用ミクロ経済学はほぼ全てゲーム理論で記述されていると言っても過言ではない。
簡単にゲーム理論を説明すると?
ゲーム理論は、
相手がある行動とったら自分はどう行動するか?あるいは、自分がある行動とった場合に相手はどう行動するか?といった相手の行動を合理的に予測しながら、互いの意思決定や行動、相互依存の関係のメカニズムを分析するものである。
自身の意思決定に基ずく行動は、周りの人々の意思決定や行動にも影響を与える。
逆もまた然りである。
ポーターのSCPで紹介したように自社視点で「企業はコスト優位・差別化のどちらかを追求すべき」と述べた。実は、そこには自社がコスト優位をもとに低価格戦略をとった場合に、ライバル企業の価格戦略にはどのような影響与えるかといった視点が組み込まれていない。現実には自社の戦略はライバルに戦略の変更を促すかもしれない。そして、その戦略変更は周り回って自社の戦略にも影響教える事になる。
互いの意識を読みあって結果として何が起きるのかを考える事こそが、競争戦略におけるゲーム理論の中心課題とも言える。
今回のゲーム理論の基盤の多くは競争理論において少数企業が市場を独占する「寡占市場」の場合で考えることが大切である。企業数が少なければ自社の行動がライバルに影響与えやすいからだ。
今回は、寡占の中でも2社が市場の大半を占める「複占」での競争戦略に終点を絞りゲーム理論を説明していく。
ゲーム理論は、互いの意思決定や行動、相互依存の関係のメカニズムを分析するもの。「複占」での競争戦略を考える。
クルーノー競争
クールーノー競争というものがある。例えば、生産量などの数量について意思決定される状況を数量ゲームといい、また、「数量決定」と「意思決定」が同時に行われる状況をクールーノー競争という。
この場合、相手と自分が増産、相手は増産するが自分は維持、、、、などのように4通りの意思決定が行われる事がわかるだろう。企業が合理的に意思決定をすると考えて進めていくと、どのような意思決定が実現するのだろうか。
ナッシュ均衡と支配戦略
この決着を考えたときに、両者が合理的に意思決定をすると相手の行動に変わらず、1つの決断に絞り込める選択肢がある場合は「支配戦略」という。
また、「同時ゲーム」は相手の行動を所与としてその行動の場合分けを行い、それをもとに自社の最適な戦略を探し出すことにつきる。このようにして最終的に定める均衡を「ナッシュ均衡」と呼ぶ。プリンストン大学の数学者ジョン・ナッシュが中心となって1950年前後に発明された概念である。
注意しなければならないのは、クールーノー競争では両者は結託をしないことで互いに「腹の読み合いをしない」をしながら、それぞれに合理的な意思決定をすることが前提となっている。
ポイントは、典型的なクールノー競争から得られるナッシュ均衡については2つのポイントがある。
①ナッシュ均衡は安定的と言うこと
②この安定的なナッシュ均衡は必ずしも両者にとって最善の状態ではない
ということである。
実際のビジネスでも、このような「非協力ゲーム」のクールーノー競争では、実現できるはずの利益よりも低い利益しかあげられないような事態が発生することが非常に多くある。
ベルトラン競争
クールノー競争では、「数量の決断」と「意思決定」がポイントだった。しかし、ビジネスではもう一つ重要な戦略である「価格戦略」も考えなければならない。このような価格も考慮したゲーム理論で考えることがベルトラン競争である。
つまり、「価格ゲーム」と「同時ゲーム」で特徴づけられる競争をベルトラン競争と呼ぶ。
ゲームでは価格維持、価格引き下げの2つの選択肢があるとする。ナッシュ均衡は両者が価格引き下げを行う場合になる。
ベルトランパラドックス
このように典型的な非協力ゲームのベルトラン競争では両者ともに価格を引き下げ、そしてたどり着く先には、両者とも利益率が減少することが多い。言わずと知れた「価格戦争」に陥ってしまう。
一般にベルトラン競争におけるナッシュ均衡では、両者の利益はクールーノー競争のナッシュ均衡よりも低くなってしまう。ここが、非常に重要なポイントである。これは2つの理由による。
①ベルトラン競争で重視されるが価格戦略であるため
価格を引き下げれば相手の顧客を直接奪うことになる。したがって、数量競争の場合よりも直接、相手の収益を下げることになる。
②非協力ゲームであるため
もし、両者が結託してともに現状維持を選べば、両社が高い利益を得ることができる。しかし、そのような行為はそもそも競争法違反になってしまう。
無数の企業が価格競争を行う完全競争では、企業の超過利潤はゼロになる。一方で完全競争から離脱した企業が市場を独占する寡占状態では、企業は利益が上がりやすいと述べてきた。
そんな寡占状態にも関わらず、ベルトラン競争に突入すると両者の利益が著しく下がってしまう。この状況がさらに極端だと、結局は完全競争と同じように超過利潤が全くの「ゼロ」になることもあり得る。
このように、本来は利益率が高いはずの寡占状態で、ベルトラン競争の結果として完全競争と同じような水準まで利益率が下がっていく事を「ベルトランパラドックス」という。
ベルトランパラドックスを避けるにはどうすれば良いか
①十分な差別化を図る
自社の製品サービスが十分に差別化されていれば、ライバルの突発な価格変化にも影響を受けないで済む
②供給量の過剰を避ける
多額の初期投資が必要なビジネスでは「投資量」に依存したクールーノー競争が発生しやすい。
クールーノー競争ではナッシュ均衡の結果として市場が供給過剰になり得ることがありうる。そして供給過剰では、企業は「価格競争」に移らざるを得ない。
最後に重要な帰結になるが、ナッシュ均衡は一度安定すると落ち着いてしまって動かない場合が発生する。日本人特有の空気や忖度もこのナッシュ均衡で説明出来るかもしれない。
ベルトラン競争:「価格ゲーム」と「同時ゲーム」で特徴づけられる競争のこと
回避するためには、①十分な差別化を図る、②供給量の過剰を避けるがある。
まとめ
今回は、【経営戦略】ゲーム理論とは?【3分解説】ついて紹介しました。
今回の記事をおさらいしますと次の通りです。
【総まとめ】
・ゲーム理論は、互いの意思決定や行動、相互依存の関係のメカニズムを分析するもの。「複占」での競争戦略を考える。
・クールーノー競争:「数量決定」と「意思決定」が同時に行われる状況をクールーノー競争という。※両社は結託をしないことが前提となる
・支配戦略:両者が合理的に意思決定をすると相手の行動に変わらず、1つの決断に絞り込める選択肢がある場合のこと
・ナッシュ均衡:「同時ゲーム」は相手の行動を所与としてその行動の場合分けを行い、それをもとに自社の最適な戦略を探し出すことにつきる。その後、最終的に定める均衡を「ナッシュ均衡」という。
・ベルトラン競争:「価格ゲーム」と「同時ゲーム」で特徴づけられる競争のこと
・ベルトラン競争におけるナッシュ均衡では、両者の利益はクールーノー競争のナッシュ均衡よりも低くなってしまうことがある。
・ベルトランパラドックス:利益率が高いはずの寡占状態で、完全競争と同じような水準まで利益率が下がっていくこと。
最初の壁となる経済学 ゲーム理論を学んできました。如何でしょう、ハードルが相当下がったと感じていただけたでしょうか。全く苦にならないレベルと感じていただけたら幸いです。
これから経営を始めたい、初学生の方の登竜門とも言える理論ですので、ぜひご活用ください!
以上、最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。