【2022年9月18日更新】図解・装飾の追加により記事内容をわかりやすく編集しました。

■第4章 組織の経済学 アドバースセレクション編

組織の経済学は何のために存在するの?

組織がビジネスで抱える課題やそもそもなぜ組織なんてものが存在するのか、なぜを繰り返した先にある疑問に答えるために組織の経済学は存在する。

情報の非対称性を考えてみよう

企業には情報の非対称性がある。この理論も根本的にはポーターの理論で言う条件5を前提に理論は開始となる。条件5を思い出してみよう。

★SCP理論の条件5を思い出してみよう★

  条件1:市場に無数の小さな企業がいて、どの企業も市場価格に影響与えられない。

  条件2:その市場に他企業が新しく参入する際の障壁がない。また、撤退する障壁もない。

  条件3:企業の提供する製品サービスが同業他社と同質=差別化がされていない。

  条件4:製品サービスを作るための経営資源が他の企業にコストなく移動できる。

  条件5:ある企業の製品サービスの完全な情報を顧客と同業他社が持っている。

SCP理論の条件5とは「ある企業の製品、サービスの完全な情報を顧客と同業他社が持っている」でしたよね。

上記理論は完備情報と呼ばれている。

どういうこと?と思われるだろう。要するに、完備情報とは「ある商品の特性や情報を完全に消費者が完全に手に入れられる状態」のことを指している。

ここまでのまとめ

組織の問題を解決するために、情報の非対称性を考える。その際は、SC P理論の条件5が前提条件であり、ある企業の製品、サービスの完全な情報を顧客と同業他社が持っていると想定しよう

■アドバースセレクションとは何か?

アカロフのLemon市場の例

2001年 コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ、ニューヨーク大学のマイケル・スペンス、カリフォルニア大学バークレー校のジョージアカロフがノーベル経済学賞を受賞した。

情報の非対称性を理解するためにこのノーベル賞の内容のアカロフのLemon市場の例を見てみよう。

内容は以下だ。※Lemonとは俗称で「中古車」の意味である

中古車というものは「完全な品質の情報が買う側にわからない」ということが前提として存在する。

中古車の1台1台はそれぞれ価値は異なるが、買い手側には情報が開示されていない。

しかし、反対に中古車を販売する側はその中古車の本当の価値を知っている状態が存在する。

これでは、情報の差があるとは直感でわかるだろう。

どちらか一方が特定の情報を持つこと「情報の非対称性」と呼んでいる。

この時は、SCPの条件5が成立していない状態である。

 ※SCP条件5:「ある企業の製品、サービスの完全な情報を顧客と同業他社が持っている」

このように売り手だけが知っている情報のことを「私的情報」と呼ぶ。

私的情報とは一体何か?

「私的情報」を持つ者の合理的な行動を考えてみよう。

私的情報を持つものは自分しか知らない情報が有利に働く。その情報を相手に開示しなければ自分だけしか知らないのだから、商品をより高く売ることができる。皆さんも合理的に考ていただきたいが、本来の価値がないものを高く売ることで自分は得ができるという状態が直観できるだろう。これは、納得していただけることだと思っている。

これが市場で続くと、その市場からは本来の正しい価格で商品を販売する者が全く存在しなくなり、本来価値のない質の悪い商品を販売する売り手だけが残る状態になってしまう。

このことを「アドバースセレクション」と名付けている。

プリンシパル(依頼人)がエージェント(代理人)のタイプを識別できず、異なるタイプのエージェントに等しい内容・条件の契約を提示してしまうために、良質のタイプが契約を結ぶことを拒否し、悪質のタイプのみが契約を結びたがる結果、全体の契約が成り立たなくなるようなことを指す。

https://kotobank.jp/word/アドバース・セレクション-184171
アドバースセレクションとは、悪質のタイプのみが契約を結びたがる結果、全体の契約が成り立たなくなるようなことを指す。これは、私的情報を持つものは「自分しか知らない情報を元に有利に働く」ことに起因する。

 
学長
まさに、、そこは無価値なモノだけが残る、悪人のみが存在するだろう。
行き着く先には私的情報を持つプレイヤーがそこら中で虚偽表示する世界になるという。

アドバースセレクションの状態は大変深刻な問題である。。。

本来なら成立するはずの市場の取引が成立しなくなることもあるので由々しき事態だ。

完全競争の条件が崩れる事は多くのプレイヤーに不利益を被らせることある。

アドバースセレクションの深掘り

ここからは非常に危険であるアドバースセレクションの例をご紹介する。

ビジネスを営む上で非常に重要な点がある。企業のスタートアップが盛に誕生している昨今であるが、スタートアップ企業は非上場なので情報開示義務がない。つまり、実態が外部から見えない点がある。

スタートアップのEXIT

スタートアップ企業がEXIT (資金回収の一手段として大企業に買収されること)を考えてみよう。先に説明したようにアドバースセレクションの問題のために外部企業はスタートアップ企業の価値をなかなか信じてもらえないことが発生する。

アドバースセレクションを巧妙に利用する企業

インターネットビジネスの発展を考えてみよう。

インターネットの特性は匿名性が強い事だ。相手の顔が見えないネット上で取引をするために情報の非対称性は大きい。

成功しているインターネット企業の多くはアドバースセレクションを巧みに利用しようとするのも事実である。

ヤフオクやメルカリは典型的なアドバースセレクションが生じる。ネット上で顔が見えない人同士が中古品の取引をするために情報の非対称性が生じている。この現象を解消するために以下のような仕組みになっている。

商品の売り買いが成立すると買い手の支払いは運営側のヤフオクに一旦入る仕組みになっている。買い手の支払いがヤフオクに預けられてから売り手が商品を送り、そして、買い手は商品を受け取って状態を確認する。売り手はECサイトで相手を評価し売り手も買い手を評価してから、初めて代金が売り手に支払われる。

アドバースセレクションの対処法

経済学ではこの問題に対する対処法「スクリーニング」と「シグナリング」が存在する。

①スクリーニング

【スクリーニング】

「企業」が私的情報を持っていないプレイヤーに取り得る対処法である。

保険を例にとると、

 ①保険料が安いが事故になったときの補助金額も安い保険

 ②保険料は高いが保障額も高い保険

この2つの商品を用意するだけである。

それだけ?と思うだろうが、実はスクリーニングされている。

自分は事故起こしやすいと知っている加入希望者、は多少高くても被害額の大きい保険を自然に選ぶから勝手にスクリーニングされる。顧客が勝手に私的情報に基づいた行動をとってアドバースセレクションが解消されるメカニズムをスクリーニングと呼ぶ。

②シグナリング

【シグナリング】

私的情報を持つ「プレイヤー」のための対処法である。

私的情報側の問題点は、自分の情報が本当だと相手に信じてもらえないことに尽きる。要は顕在化したシグナルを見るという事である。

企業側も情報の非対称性や背景があるからこそ経済の世界にはディスクロージャーといった仕組みがある。情報開示が大きなテーマになっているという事である。つまり、統計分析を基にしてからステータスの高いベンチャーキャピタル企業から投資を受けている企業ほど他企業との資本提携を行いやすくなる。

上場企業にも非上場企業を対象にした買収のパフォーマンスが高まっている。上場企業は一般に情報が公開されている。企業投資家向けにメディアや顧客などすべてのステークホルダーに公開されている。逆に言えば、この情報は外部の誰でも知っているのだから希少価値がないとも言える。

これらスクリーニングとシグナリングの観点を持つことが大切である。

アドバースセレクションの解決には、「スクリーニング」と「シグナリング」の対処法が存在する。【スクリーニング】は「企業」が私的情報を持っていないプレイヤーに取り得る対処法。【シグナリング】は、顕在化したシグナルを見るという対処法である。
 
学長
情報の非対称性を解消するために企業側かプレイヤー側かの立場にたって情報の非対称性を考えることは大切だね。

まとめ

今回は、【組織経営】アドバースセレクション編【3分解説】ついて紹介しました。

今回の記事をおさらいしますと次の通りです。

【総まとめ】

組織の問題を解決するために、情報の非対称性を考える。その際は、SC P理論の条件5が前提条件であり、ある企業の製品、サービスの完全な情報を顧客と同業他社が持っていると想定しよう

アドバースセレクションとは、悪質のタイプのみが契約を結びたがる結果、全体の契約が成り立たなくなるようなことを指す。これは、私的情報を持つものは「自分しか知らない情報を元に有利に働く」ことに起因する。

アドバースセレクションの解決には、「スクリーニング」と「シグナリング」の対処法が存在する。【スクリーニング】は「企業」が私的情報を持っていないプレイヤーに取り得る対処法。【シグナリング】は、顕在化したシグナルを見るという対処法である。

まとめ:組織の問題を解決するために、情報の非対称性を考える。情報の非対称性はアカロフのLemon市場の例のように突き詰めると悲惨なことになる。そんな私的情報をアドバースセレクションといい、対処法として、スクリーニングとシグナリングを考えよう。

最初の壁となる経済学 基礎編【基本編】を学んできました。如何でしょう、ハードルが相当下がったと感じていただけたでしょうか。全く苦にならないレベルと感じていただけたら幸いです。

これから経営を始めたい、初学生の方の登竜門とも言える理論ですので、ぜひご活用ください!

以上、最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。

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