【2022年9月18日更新】図解・装飾の追加により記事内容をわかりやすく編集しました。

■第8章 組織の経済学 リアルオプション理論

リアルオプション理論

リアルオプション理論とは金融工学のオプション取引に起源がある理論である。

ファイナンス分野では1970年代からオプション投資の議論が発展してきているが、その先駆けとなっているのがオプションの価格算定式を、偏微分方程式で記述した「ブラックショールズ方程式」である。

この方程式を開発したマイロン・ショールズとロバート・マートンは1997年にノーベル経済学賞受賞している。

その後、コーポレートファイナンスの文脈でMITのスチュアート・マイヤーズが1980年代に論文を発表した契機として「事業評価計画のリアルオプション」がで一気に注目されるようになる。そして、1990年代に入ると経営理論としてのリアルオプションがついに花開く。

リアルオプションの何が革新的なのか?

現在でも事業評価の定番手法は「ディスカウントキャッシュフロー法」である。「ディスカウントキャッシュフロー法(DCF法)」は、将来その事業が生み出すであろうキャッシュフローにより事業評価を強化する事に尽きる。これに対し、リアルオプション理論は「事業計画の不確実性」を事業計画に落としたことにある。

DCF法ってなんだろう?

ある日本メーカーが新興市場で今注目されている新規事業を始めようとしているとする。現地に工場建設を検討している場合、必要なことは事業計画とその「収益性評価」である。

その収益性評価の提案手法がDCF法である。

DCF法は将来にその事業が生み出す「キャッシュフローを現在価値に見直した上で合計し、キャッシュフロー合計から初期費用を含めたコストを差し引く」ことである。

結果として得られたDCF法がプラスなら企業が事業に投資すべきだし、マイナスであるならば投資すべきでないことになる。ポイントはDCF法では将来の事業環境を予測して事業計画を立て、その予測を前提に将来キャッシュフローを計算することにある。

リアルオプション理論をどう生かすのか?

リアルオプションの事業計画の評価法では不確実性を生かす発想を行う。それは、当初計画よりも小さい初期費用で工場を作ってとりあえず事業を始めることを考える。

もし、成長性が低いという帰結になれば事業撤退すればよし、その時でもまだ見通しがつかなければ、そのまま小規模で事業を続ければ良い。

リアルオプション理論のメリット

メリット:不確実性が高いほど価値が増大する

リアルオプションで最も重要なのメリットはDCFを使う限りマイナスorプラスの成長かの不確実性がある事業計画は間違いなく却下される。しかし、リアクションが逆になる場合がある。この場合に小さく投資をすれば成長した場合のリターンが得られる可能性がある。

要するにリアルオプションの真髄は、不確実性の高い状況で将来のオプションを意図的に作り出し、逆に不確実性を生かすことに尽きる。よく精神論で不確実性を恐れるなと言うが、その状況を自らの戦略投資デザインで作り出せるのかが肝である。

リアルオプション理論は「事業計画の不確実性」を事業計画に落としたことが革新的である。収益性評価の提案手法がDCF法。メリットは、不確実性の高い状況で将来のオプションを意図的に作り出し、逆に不確実性を生かすことに尽きる。

リアルオプションの応用偏

①コールオプション

不確実性が高い場合に、相手企業の株式を全て買収するべきかに注目した理論である。

オプション視点から、このような時こそ部分出資や相手企業と合弁を組んだりし、事後的に不確実性が下がってから残りの株を買う「コールオプション型」の戦略を取った方が良いことになる。

②スイッチングオプション

複数の不確実性の高い市場に拠点を持ち、投資ポートフォリオ全体のリスクヘッジを考慮してアップサイドを取る戦略である。

計画では特に多国籍企業の投資戦略への応用が住んでいる。

③撤退オプション

不確実性が高い時に撤退しやすくするオプションである。

何らかの手段で撤退をしやすいデザインを事前に組めば、下振りリスクを抑えながらチャンスを取れるので不確実性が高い事業に投入しやすくなる。

今後、リアルオプションはさらに重要である。高い不確実性での事業計画では将来の市場規模や市場価格、顧客の思考等の計画の前提を先に全て洗い出し、事業が始まって不確実性が下がったら、その都度に前提を見直して計画を練りなおすアプローチを考えてみよう。

リアルオプション戦略はいつ有効か?

リアルオプション的な戦略を検討するときには事業環境やビジネス特性がそれらの条件を満たしているかを検討する必要がある。

条件1 :投資の不可逆性が高い場合

投資の不可逆性とは、一旦投資すると確定すると撤回できない性質の投資を示すもの。典型例は巨額の固定費が掛かるケースである。不可逆性が高いと事業環境が下ぶれしたときに投下した資金を取り返せないのでリスクが大きくなる。したがって、むしろリアルオプション型の戦略が有効になる。

条件2:オプション投資コストが低い場合

コストがかからないことは重要である。新株予約権方式で事後的に株を追加買収できる権利を得ることは重要である。

条件3 :事業環境の不確実性が高いこと

事業環境の不確実性が高いときにオプション価格が上昇する。

不確実性とはそもそも何か?

経済学での不確実性とは、基本的には「つりがね型の確率分布」として認識されている。しかし、現在のビジネスで我々が直面する「不確実性」は経済学が仮定するほどシンプルとは限らない。実際、ビジネスにおける不確実性の種類分けについて様々な研究が行われている。

■「内生的不確実性」と「外生的不確実性」

外生的な不確実性とは

企業が自らの努力では低下させることができないタイプの不確実性

例えば、M &Aを考えている場合に買収する側の企業が直面する不確実性が、相手企業のいる外部的な「市場の成長性や市場価格の将来動向だけ」だとしたら、その不確実性を自分たちの力だけ下げるのは難しい。このような時は、リアルオプション的な戦略投資が有効になる。

内生的な不確実性とは

企業が自らの努力では低下させることができるタイプの不確実性

反対に買収する側の企業が直面する不確実性がターゲット企業の「技術レベル」だったらどうか。この場合、買収する側の企業に必要なのは段階投資なので不確実性が下がるのを待つオプション型の戦略ではない。

むしろ、ターゲット企業に積極的に人員を送り込んで徹底したデューデリジェンスを行うはずだ。そうすれば自らの力で不確実性を下げられるかもしれない。

このような場合はリアルオプション的な戦略は必ずしも有効ではない。

不確実性の4つのレベルに分ける

もう一つ有用な種類分けはメリーランド大学のヒュー・コートニーが提案したものだ。

以下の通りに分けられる。

 ①レベル1 :確実に見通せる未来 十分な角度の予測

 ②レベル2 :他の可能性もある未来 将来を明らかにする離散データ

 ③レベル3:可能性の範囲が見えている未来 最も可能性のある高いシナリオは描けない

 ④レベル4 :全く読めない未来 予測のよりどころがない

現実的な不確実性が分かるラインはレベル2あたりだろうか。このようにオプション的な戦略を活用する上で求められるのは事業環境の不確実性をよく見抜き、確実性のタイプを絞り込む力である。

不確実性とは、つりがね型の確率分布のことである。外生的な不確実性がある場合に、リアルオプション理論が重要になってくる。

■まとめ

【総まとめ】

リアルオプション理論は「事業計画の不確実性」を事業計画に落としたことが革新的である。収益性評価の提案手法がDCF法。メリットは、不確実性の高い状況で将来のオプションを意図的に作り出し、逆に不確実性を生かすことに尽きる。

今後、リアルオプションはさらに重要である。高い不確実性での事業計画では将来の市場規模や市場価格、顧客の思考等の計画の前提を先に全て洗い出し、事業が始まって不確実性が下がったら、その都度に前提を見直して計画を練りなおすアプローチを考えてみよう。

・リアルオプション戦略は、

 条件1 :投資の不可逆性が高い場合

 条件2:オプション投資コストが低い場合

 条件3 :事業環境の不確実性が高いこと 時に有効

不確実性とは、つりがね型の確率分布のことである。外生的な不確実性がある場合に、リアルオプション理論が重要になってくる。

 
学長
リアルオプション理論を機械で自動化し戦略的に投資を判断してみよう

今回は、最初の壁となる【経営戦略】リアルオプション理論とは?【3分解説】を学んできました。如何でしょう、ハードルが相当下がったと感じていただけたでしょうか。全く苦にならないレベルと感じていただけたら幸いです。

これから経営を始めたい、初学生の方の登竜門とも言える理論ですので、ぜひご活用ください!

以上、最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。

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