病院の電子カルテに隠れたヒントをAIが発見し、希少疾患の潜在患者を見つけ出す。そんな新たな医療のかたちが、京都大学医学部附属病院(京大病院)で現実になっています。
希少疾患「遺伝性血管性浮腫(HAE)」は、診断が難しく、多くの患者が治療の機会を逃してきました。そこで登場したのが、AIを活用した診断支援モデルです。今回の取り組みは、日本IBMや診断コンソーシアムと連携し、日本の医療現場におけるAI活用の可能性を大きく広げました。
この記事では、このAIモデルの仕組みや検証結果、そして医療現場でのインパクトについて詳しく解説します。希少疾患診断の未来を一緒にのぞいてみましょう!
【本記事のもくじ】
目次
希少疾患診断の難しさとAIの可能性
HAEは、5万人に1人という非常に稀な疾患であり、その症状は他の病気と似ているため診断が困難です。診断が遅れることで患者は必要な治療を受けられず、生活の質が大きく損なわれてきました。
診断の課題
- HAEの症状は一般的なアレルギーや他の病気と重なるため、医師が見逃しやすい。
- 専門医に診てもらうまでのプロセスが長く、診断に至るまでに多くの時間がかかる。
AIが提供する解決策
- AIは電子カルテデータを分析して、病気の手がかりを見つける能力があります。
- これにより、医師が見落としていた潜在患者を抽出し、早期診断を可能にします。
- 特に希少疾患のように症例が少ない病気では、AIの力が非常に有効です。
京大病院での実証実験
京大病院では、日本IBMと一般社団法人遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム(DISCOVERY)が開発したAIモデルを用いて検証を行いました。このモデルは、これまで主に米国のデータを基に構築されており、日本での適用は初めての試みでした。
検証の流れ
- 2022年12月から研究を開始。
- 京大病院の電子カルテデータにAIモデルを適用。
- AIが「HAEのリスクが高い」と判断した患者を調査。
検証結果のインパクト
- AIが「リスクあり」とした患者の約20%が、実際にHAEの診断または疑いがあることが判明。
- この結果は、医師が診断プロセスで見逃していた患者を発見できる可能性を示しています。
- 特に、国内データにおいてもAIモデルが有効性を発揮したことは重要な成果です。
今後の展望と課題
今回の検証は、AIを活用した診断の可能性を大いに示しましたが、さらなる改善と発展が求められます。
改善点
- データ量と質の向上
- 国内での症例数を増やし、AIモデルの精度を高める。
- 複数病院でのデータ共有を進め、モデルの汎用性を向上させる。
- 他疾患への応用
- HAEにとどまらず、同様の手法を他の希少疾患や慢性疾患の早期診断に活用。
- 医師との連携強化
- AIが提示した結果を医師がどのように活用するかを研究。
- AIの診断結果の透明性(Explainable AI)を向上させ、医師が納得しやすい仕組みを作る。
結論
AIがもたらす希少疾患診断の進化は、医療における革命的なステップと言えるでしょう。特にHAEのような難診断疾患では、AIが医師の手助けをすることで、早期発見・早期治療の可能性が広がります。
AIと医師が協力し、患者の未来をより良いものにする時代が、いよいよ始まろうとしています。