【経営戦略】ゲーム理論②とは?【3分解説】

【2022年9月18日更新】図解・装飾の追加により記事内容をわかりやすく編集しました。

■第7章 組織の経済学 ゲーム理論②

■ゲーム理論②

今回は、2社だけが競争する寡占市場において協力や結託をしないまま競合する両者の意思決定をゲーム理論を使って説明していく。

同時ゲームと逐次ゲーム

同時ゲームと逐次ゲームというものを聞いたことがありますか?

「同時ゲーム」とは、プレイヤーが同時に互いに手を出す。これが、同時ゲームだ。

他方で「逐次ゲーム」は相手の手がわかってからもう一方が次の行動を行うことを指す。

クールノー競争の振り返り

価格よりも数量を軸とした非協力ゲームはクールノー競争と呼ばれるとご紹介した。クールノー競争は実は「同時ゲーム」とも取れる。クールノー競争では、自分の行動の利得を考え、自分に有利な意思決定をすると考える競争のことだった。

逐次ゲームを考える

次に逐次ゲームを考えてみよう。逐次ゲームは先に宣言をした企業に追づいする企業が意思決定する事がベースとなる。

例えば、来年は絶対に製品を増産する!と先に宣言するとしよう。先に宣言することで同時ゲームを逐次ゲームに変え自社に有利な状況を見出すことができる。このことから、ゲームのルールは変えられるということが分かる。

先に宣言をすることで「逐次ゲーム」の状況を生み出す戦略には重要なポイントがある。

①「宣言」が信用できることが重要

宣言をしたとしても他社がその宣言を信じなければ逐次ゲームにならないことが想像出来るであろう。したがって、強制的に逐次ゲームの状況を作り出したいときには、その宣言がウソではないことを相手に徹底してわからせる必要がある。

②リスクを取ることも重要

さらに言えば、撤回できないようなリスクを取ることも大切である。相手に絶対にこちらは引く気はないことを分からせる必要があるのだ。これを通称「戦略的コミットメント」という。

【数量軸の競争】

一般に生産量の「数量」を軸に競争するときは、現状維持よりも増産のような強気の戦略の方が自社に有利になりやすい。なぜなら、先に「増産」という強気な先手を打たれると、ライバル企業は自社も増産した場合に市場が過剰気味になることがわかっているので、強気な戦略で返せないのである。

一方で他社も自社も同じ手を打つことが予想される場合には、両者が強気の戦略はむしろ裏目に出やすい。強気な手を打つと相手も強気で返してくるので、いずれ消耗戦になってしまう。

【価格軸の競争】

加えて、「価格」を軸にした競争戦略は補完的になりやすい。自社が強気に価格を下げたら顧客を奪われることを恐れる。これは価格引き下げで返さざるを得ず、結果として両者とも利益がどんどん減っていく。

逆に両者の戦略は補完的と予測が立つ場合に、かつ、逐次ゲームの状況を作りたいときには、価格維持などの「弱気な戦略」が有効になる。

同時ゲーム:プレイヤーが同時に互いに意思決定を行う。
逐次ゲーム:相手の手がわかってからもう一方が次の行動を行う。

ポイント ①「宣言」が信用できることが重要 ②リスクを取ることも重要

【数量軸の競争】現状維持よりも増産のような強気の戦略の方が自社に有利になりやすい。

【価格軸の競争】逐次ゲームの状況を作りたいときには、価格維持などの「弱気な戦略」が有効。

ベルトランパラドックスを発生させない条件

非協力かつ同時ゲームの価格競争を行うナッシュ均衡は、両者の価格を下げる事に繋がり、相手から顧客を奪うことで収束する。つまり、価格の競争が起きてしまい、両者とも大きく利益を失うベルトランパラドックスに陥ってしまう。

しかし、世界には寡占状況の業界は多くある。ベルトランパラドックスに陥るような業界もあれば、逆に価格競争が起きずに高い収益力を保ったままの寡占業界もある。

どうしてこのような差が出るのか?

前回はベルトランパラドックスを避ける秘策として、①十分な差別化②供給量の過剰を避けるといった2つを挙げた。しかし、それ以上に重要な点がある。

それは、ライバルとの関係は1回切りのゲームではなく、むしろ「無限に繰り返されるゲーム」だということを忘れないでほしい。その場合、両社はベルトランパラドックスに陥る価格競争を延々と続けるだろうか?

おそらく「両社が合理的であればあるほど無限に価格競争を続けて利益の削りあいは不毛だし、相手もそう思ってるはずだ」と考えるはずである。その結果、両社は合理的な判断の帰結として価格を下げなくなるのである。この帰結を「フォーク定理」と言う。

大切な事はこの無限に続く繰り返しゲームもまた「非協力ゲーム」だということである。つまり、いつの間にか相手を合理的に信頼する状況が起きるのである。

人を信頼するとはなにか?

人を信頼するとはどういうことだろうか。人間の心の中は見返りなしに無償で人を信じる部分があると考えがちである。心理学や社会学でも性善説の心のメカニズムを主張する研究者も多い。

しかし、経済学のゲーム理論で人の信頼は無限繰り返しゲームをする人々が自分と相手の損得を考えた上での合理的な判断の帰結として起きていると捉える。

ある人とこれから長い付き合いになるという事は、その人と無限繰り返しゲームを行うということだ。そうであれば相手も自分を裏切るのは合理的でないと考えるだろうし、自分も相手を裏切ることは合理的でないと予想するのだ。

信頼は人の本質から生まれるのか、それとも無限繰り返しゲームの計算されたものなのか、、、これは簡単に答えの出る問題ではない。

ご紹介してきた理論のすべての背後に「ゲーム理論」の存在がある事を覚えていて欲しい。

ライバルとの関係は1回切りのゲームではなく、「無限に繰り返されるゲーム」である。両社は合理的な判断の帰結として価格を下げなくなる。この帰結を「フォーク定理」という。
「信頼」というキーワードが重要。信頼は人の本質から生まれるのか、それとも無限繰り返しゲームの計算されたものか考えてみよう。
 
学長
ベルトランパラドックスを避けるためには、十分に差別化を図り供給量を適切に保たなければならないという事だね。

■まとめ

今回は、【経営戦略】ゲーム理論②とは?【3分解説】ついて紹介しました。

今回の記事をおさらいしますと次の通りです。

【総まとめ】

同時ゲーム:プレイヤーが同時に互いに意思決定を行う。

逐次ゲーム:相手の手がわかってからもう一方が次の行動を行う。

  ポイント ①「宣言」が信用できることが重要 ②リスクを取ることも重要

  【数量軸の競争】現状維持よりも増産のような強気の戦略の方が自社に有利になりやすい。

  【価格軸の競争】逐次ゲームの状況を作りたいときには、価格維持などの「弱気な戦略」が有効。

ライバルとの関係は1回切りのゲームではなく、「無限に繰り返されるゲーム」である。両社は合理的な判断の帰結として価格を下げなくなる。この帰結を「フォーク定理」という。

「信頼」というキーワードが重要。信頼は人の本質から生まれるのか、それとも無限繰り返しゲームの計算されたものか考えてみよう。

まとめ:クールノー競争では、「数量の決断」と「意思決定」がポイント。しかし、「価格戦略」によるベルトラン競争も考える必要がある。いずれは、ナッシュ均衡で落ち着き、価格競争が始まる。ベルトランパラドックスを避けるためには、十分に差別化を図り供給量を適切に保たなければならない

最初の壁となる経済学 ゲーム理論を学んできました。如何でしょう、ハードルが相当下がったと感じていただけたでしょうか。全く苦にならないレベルと感じていただけたら幸いです。

これから経営を始めたい、初学生の方の登竜門とも言える理論ですので、ぜひご活用ください!

以上、最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。

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