【2022年9月17日更新】図解・装飾の追加により記事内容をわかりやすく編集しました。
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■第 1 章 ポーターの戦略論 「SCP理論」【基本編】
マイケル・ポーターとは何者か?
マイケル・ポーターさんはハーバード大学院の教授でり、1970〜80年代に経済学で発展してきたSCPをポーター流の「経済学のSCP理論」として大々的に体系化させた人物である。MBAの経営戦略の教科書で基本的に競争戦略は最初に紹介されることが多い。
SCP理論ってなんの略?
Structure-Cinguct-Performanceの略称。(=構造 – 遂行 – 業績)の略称である。
簡単に要約すると「その産業がなぜ儲かる構造になっているのか?」に対して説明する理論。
SCP理論を学ぶと何が分かる?
「完全競争」と「完全独占」の2つを市場の対局としてベンチマークして考える思考法が身につく。
ある市場の成長性が高いからといって企業の利益率が高いとは限らない場合がある。例えば、半導体産業の場合は成長性は高いが利益率は低く、逆に成長性は低い食品産業の方が利益率が高いことがある。このように、産業の収益性は需要の伸びだけでは説明できないような事象を学ぶことができる。
ここまでのまとめ
■SCP理論の理解
SCPを学ぶ上で重要な概念が「①完全競争」と「②完全独占」という概念である。
SCPの条件ってなに?
※消費者が合理的な意思決定を行う大前提があるということに留意
条件1:市場に無数の小さな企業がいて、どの企業も市場価格に影響与えられない。
条件2:その市場に他企業が新しく参入する際の障壁がない。また、撤退する障壁もない。
条件3:企業の提供する製品サービスが同業他社と同質=差別化がされていない。
条件4:製品サービスを作るための経営資源が他の企業にコストなく移動できる。
条件5:ある企業の製品サービスの完全な情報を顧客と同業他社が持っている。
■完全競争の解説
完全競争の概要
ここからは基本的な概要を理解しましょう。
「完全競争」の場合は、価格が市場の需要量と供給量があるポイントで一致し、市場価格はその価格になる(需要と供給の一致の法則)。基本的に企業は市場価格に影響を及ぼせない状態になる。
完全競争は主に条件の1〜3の3つで説明できる
条件1:市場に無数の小さな企業が存在し、どの企業も市場価格に影響与えられない
条件2:その市場に他企業が新しく参入する際の障壁がない、その市場から撤退する障壁もない
条件3:企業の提供する製品サービスが同業他社と同質=差別化がされていない
上記から導かれる完全競争の結論は、企業の「超過利潤」が「0」になるということ。
つまり、企業が本当にギリギリ生存できる利益しか挙げられていない状態になってしまう。
完全競争のメカニズム
①A企業が超過利潤を上げている。
②他企業やスタートアップが参入。
※完全競争では参入コストがかからないため儲かっている産業に参入するのは合理的である
③多くの企業が参入したが、ほとんどの企業が同じ製品を作っている状態になる。
④A企業は製品特性で勝負できないため、ライバルに勝つには価格を下げるしか生きていけない。
⑤結果、完全競争下では徹底した価格競争が行われ、全ての企業がギリギリで運営できるだけの利益しかあげられない。
■完全独占の解説
完全独占の概要
ここからは完全独占の場合をみていきましょう。
「完全競争」の条件第1、2、3の真逆を考えてみる。それが「完全独占」という。簡単なイメージは業界トップだけが存在し、企業が参入できない状態にあることである。
独占企業は生産量も価格も自分でコントロールできるので、自社の超過利潤を「最大」にする生産量と価格を設定できるメリットがある。
完全独占のメカニズム
①独占企業が自社の超過利潤を最大にする生産量と価格を設定する。
②生産量は限界費用と限界収入が一致するポイントに落ち着く。
※収入と費用の差が最大になるところで生産する
③完全独占の場合は完全競争と比べて供給量が減り市場価格が上昇する。
④独占企業は大幅な超過利潤を得ることができる。
この完全独占がおこると市場支配力がMAXになり市場価格が全て1社にコントロールされてしまう。多くの国の競争法違法となっている。このような状況が起きる事はそうないが、、、近い企業が現実に存在するのも事実である。
ここまでのまとめ
■目指すべき「寡占」の解説
寡占はなぜ儲かるのか?
寡占を語る際に重要な人物3名をご紹介する。
①カリフォルニア大学バークレー校教授のジョー・ベイン
②ハーバード大学教授のリチャード・ケイブス
③ハーバード大学教授のマイケル・ポーター
上記3名を参考に、①ベインのSCP ②ケイブスとポーターのSCPに分けて「寡占」がなぜ儲かるのかを解説する。
※「寡占」とは少数の企業に売り上げが集中している状況のこと
①ベインによる経済学のSCP
ベインは寡占は企業数が少ない場合と多数存在する場合に着目し、企業の行動が他企業に影響を及ぼしやすい点に注目した。
どんな企業が寡占になりやすいのか?に注目したことが上記の条件2の逆の発想である。
条件2:その市場に他企業が新しく参入する際の障壁がない、その市場から撤退する障壁もない
どういうことか?、、、要するに、「参入障壁」の存在である。
業界に参入する障壁が高ければ既存企業は超過利潤を占有できる。つまり、規模の経済と言われるスケールメリットの概念の誕生である。
たった数社しか存在しない状況では、合理的に判断すると価格を下げないほうが正しい。
結果、安定した収益を保つことができる。もちろん、この行動は競争法の範囲内で行わなければならない。しかし、この暗黙の共謀で特徴づけられる業界は現実に多くある。特に食品関係業界は顕著である。つまり、寡占度が高い市場ほど企業の平均利益率が高くなる傾向があるということだ。
【業界間の参入障壁】
規模の経済の産業は生産量がどんどん増えるほど平均費用が下がる。この産業への参入は極めて難しい。既存企業と戦争するためには、同じ低水準を実現する大規模生産を一気に達成する必要がある。したがって、独占や寡占に近づく。
例えば、石油化学など大規模な固定費が必要な業界では、この効果が顕著である。固定費が大きい場合は生産量を大幅に増やさないと平均費用は充分に下げられないからだ。
②ケイブスとポーターによる経済学のSCP
彼らが提示したのは、そもそも参入障壁や産業だけにあるのではない。1つの産業の中にも企業の移動障壁があるのでは?と言うものだ。移動障壁は、あるグループの企業が特性の違う別グループに参入するのは難しいと言うものだ。
【業界内の参入障壁】
高い利潤を確保したい企業に重要な戦略は、自社のグループの特性をなるべく他グループと競わせないことにある。さらに言えば、自社グループの企業が少ない方がそのグループが独占状況に近づくとも言える。すなわち、差別化することと同義だ。
ポーターの競争戦略では、「差別化理論」が常に重視されるのはそのためである。
ここまでのまとめ
まとめ
今回は、ポーターの戦略論について紹介しました。記事をおさらいしますと次の通りです。
【総まとめ】
・SCP理論を活用する事で、自分の働く産業が儲かっている/いないのかを検討する事ができる。具体的には、「完全競争」と「完全独占」の立場から2つの市場の「対局」をベンチマークして考えることができるようになる。
・完全競争は、企業の「超過利潤」が「0」になること
・完全独占は、自社の超過利潤を最大にする生産量と価格を設定できるメリットがある
・寡占度が高い市場ほど、企業の平均利益率が高くなる傾向がある
①ベインのSCP:スケールメリットによる産業間の高い参入障壁が築かれる
②ケイブスとポーターのSCP:1つの産業内での各企業が差別化により企業間の高い移動障壁が築かれる
最初の壁となるポーターの経営理論を学習してまいりましたが、ハードルが相当下がったと感じていただけたでしょうか。全く苦にならないレベルと感じていただけたら幸いです。
これから経営を始めたい、初学生の方の登竜門とも言える理論ですので、ぜひご活用ください!
以上、最後まで記事を読んでいただき、ありがとうございました。