こんにちは、ヤク学長です。
本日は、ニューヨーク大学のデータサイエンスセンターで2021年春に開講された、Yann LeCun教授とAlfredo Canziani教授による「ディープラーニング」の講義に焦点を当ててみたいと思います。
この講義はZoomを通じて週に一度、実践的なセッションも含めて提供され、その全ての教材がGitHubリポジトリで公開されています。講義内容は、基本的なニューラルネットワークの訓練から始まり、最先端のエネルギーベースモデルやグラフ変換ネットワーク、自己符号化器やGANsまで、幅広いテーマを網羅しています。
今回は、これらの講義が私たちの業界、特に医療と薬学にどのように応用可能か、具体的な事例を交えながら掘り下げていきます。未来の医療技術に一石を投じる可能性を秘めたこの講義に、どうぞご期待ください!
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【本記事のもくじ】
Theme 7:制御
7-1 プランニングと制御について
今回の講義では、プランニングと制御の基本概念について説明されました。この講義では、特に「モデル予測制御(Model Predictive Control, MPC)」が取り上げられ、制御システムにおける重要な考え方や応用が紹介されました。具体的には、キネマティック方程式における逆伝播と、エネルギー最小化問題が説明され、理論から実装までの流れが示されています。
MPCとは?
モデル予測制御(MPC)は、制御問題を扱う際に、システムの将来の挙動を予測しながら最適な制御入力を決定する手法です。具体的には、システムの現在の状態と将来の状態を予測し、その上でエネルギーやコストを最小化する制御入力を導出します。この講義では、キネマティクス(物理モデルに基づく運動方程式)を用いて、この制御方法がどのように実現されるかが示されました。
エネルギーベースモデルと潜在変数の最適化
エネルギーベースモデルでは、潜在変数を介してエネルギーを最小化し、最適な解を導出します。この講義では、潜在変数(z)を使った最適化が再確認され、制御問題にも同様のアプローチが適用されることが説明されました。潜在空間での最適化は、具体的な制御入力(例:車のステアリング角や加速度)を最小エネルギー解として導出するために用いられます。
制御の実際のステップ
- 初期条件の設定: システムの初期状態(例:車の位置や速度)を設定します。
- 制御入力の適用: 潜在変数を制御入力として用いて、システムの状態を更新します。具体的には、前進した距離やステアリング角の変更を考慮して、システムの挙動を予測します。
- エネルギーの最小化: 最終的な目的地に到達するため、エネルギー(コスト)を最小化するように制御入力を調整します。この過程で、勾配降下法を用いて潜在空間での最適化が行われます。
実装例
Pythonを用いた実際の制御アルゴリズムの実装も紹介されました。コードでは、システムの状態を表す変数と制御入力が定義され、これを基にシミュレーションを実行します。講義では、車両の運動をシミュレートし、目的地に到達するまでのプロセスを実演しました。
結論
今回の講義では、プランニングと制御の基本概念、特にモデル予測制御(MPC)を中心に解説されました。MPCは、システムの未来の挙動を予測しながら制御を行う有力な手法であり、機械学習や最適化手法と結びつけることで、より複雑なシステムの制御にも応用可能です。エネルギーベースの最適化に関する理解が深まれば、より効率的で柔軟な制御が実現できるでしょう。
感想
講義内容は少し高度で専門的ですが、具体的な例を通じて理解がしやすくなっていました。特に、勾配降下法を用いた制御の実装部分は、理論と実践を結びつける良い教材でした。今後、この手法を他の分野でも応用できるよう、さらなる学習が必要です。
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7-2 トラックのバック運転問題
トラックバックアップとは?
今回の講義では、1990年代に発表された「トラックバックアップ」問題が中心となり、トレーラートラックを後進させて正確に駐車するための制御問題について学びました。この問題は、トレーラートラックが任意の初期位置からバックで荷積みドックに戻るという課題を自己学習を通じて解決するものです。
講義では、この問題に対してニューラルネットワークを用いてトレーラートラックの運動学を模倣するエミュレーターを学習し、次にそのエミュレーターを使ってトラックを制御するポリシー(制御器)を学習する2段階の学習プロセスが紹介されました。
トラックバックアップ問題の設定
- 目標: トレーラートラックがバックして荷積みドックに正確に駐車すること。具体的には、トレーラーの後部がドックに平行に整列し、できるだけ近い位置に到達する。
- 制御信号: ステアリングの角度(φ)を制御します。前回の講義で説明された制御問題と同様に、一定の速度で後進しながら、このステアリング角度を適切に調整して駐車します。
学習プロセス
講義で取り上げられた学習プロセスは次の2つです。
- 運動学エミュレーターの学習:
- ランダムなステアリング信号を与え、トレーラートラックの運動学モデルをニューラルネットワークで模倣します。
- 実際のトラックの動きを観察し、その動きに基づいて次の状態を予測するエミュレーターを学習する。
- 制御器(ポリシー)の学習:
- 学習したエミュレーターを使って、制御信号(ステアリング角度)を生成するニューラルネットワークをトレーニングします。
- これにより、トラックがどのようにステアリングを操作すれば最適にドックにバックできるかを学習します。
エミュレーターのトレーニング方法
エミュレーターを学習するためには、ランダムなステアリング信号を生成し、それに基づいて次のトラックの状態を予測します。予測された状態と実際のトラックの状態との差分(誤差)を最小化するようにニューラルネットワークをトレーニングします。この誤差が、小さければ小さいほど、エミュレーターの精度が向上します。
制御器のトレーニング
制御器のトレーニングでは、エミュレーターを利用して、バック時の最適なステアリング角度を予測するネットワークを学習します。このネットワークは、トラックの現在の状態に基づいて最適な制御信号を生成することを目的としています。これにより、トレーラートラックが正確にドックに駐車できるようになります。
結論
今回の講義では、トラックバックアップ問題を解決するための自己学習アプローチが紹介されました。まず、トラックの運動学を学習し、次にその運動を制御するポリシーを学習するという2段階のプロセスを通じて、トラックが正確にバックできるようになることを目指します。
感想
トラックのバック駐車は、現実世界でも非常に難しい課題ですが、機械学習を活用することでその制御を自動化できる可能性があります。制御信号の最適化や運動学のモデリングなど、興味深い技術的挑戦が含まれており、今後の応用が期待されます。
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7-3 不確実性下での予測と計画
今回の講義では、モデル予測制御(Model Predictive Control, MPC)を用いた不確実な環境下での予測と計画に焦点を当てました。この講義は、特に不確実性が高い環境での行動計画をどのように最適化できるかについて説明し、従来のMPCと不確実性の取り扱いを統合したアプローチを紹介しました。
モデル予測制御と不確実性
1. モデル予測制御(MPC)の基礎
MPCは、システムの現在の状態に基づいて、将来の複数の時間ステップにわたって予測を行い、コスト(例えばエネルギーや制御エラーなど)を最小化するために、最適な制御アクションを計算する方法です。この手法では、将来の状態を予測するためにシステムの運動方程式が必要ですが、講義で扱われたように、不確実な環境下ではこの予測が困難になる場合があります。
2. 不確実な環境下での予測
講義では、カメラによって観測された複数の車両のデータを使って、交通状況を予測するモデルが紹介されました。このような状況では、車両同士の相互作用や外部要因によって発生する不確実性が大きく、これを無視した制御では望ましい結果が得られないことが示されました。
3. 不確実性最小化のためのアプローチ
不確実性を考慮するために、モデルは予測精度のばらつき(分散)を基にして、どの程度予測が信頼できるかを判断します。このアプローチでは、行動(アクション)に対して予測がどの程度正確かを示す「不確実性」を導入し、信頼できる範囲内での最適な行動を選択することが可能です。
方法の紹介
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観測データの処理
実際の観測データから、車両の位置と速度を抽出し、各車両の未来の動きを予測するための状態ベクトルを作成します。この状態ベクトルには、車両の位置、速度、他の車両との相対的な位置関係などが含まれます。 -
不確実性のモデリング
不確実性を考慮するために、予測の分散(不確実性の大きさ)を計算します。この分散に基づいて、予測が信頼できるかどうかを評価し、行動を選択します。 -
予測モデルのトレーニング
ニューラルネットワークを使用して、過去の観測データから次の状態を予測するモデルをトレーニングします。このモデルは、不確実性を考慮した複数の出力を生成し、その中から最も適切な行動を選択する仕組みです。 -
不確実性を最小化する制御器の学習
制御器(ポリシー)は、学習された予測モデルに基づいて行動を選択しますが、不確実性が高い領域では保守的な行動を取るように最適化されます。この最適化は、予測モデルと制御器を連携させ、分散が小さくなるように行われます。
結論
不確実な環境下での予測と計画は、現実世界の複雑な相互作用を扱う際に不可欠です。今回の講義では、分散を利用して不確実性を最小化するアプローチが紹介され、MPCと不確実性モデリングを組み合わせることで、交通のような複雑な状況でも信頼性の高い行動計画を立てることができることが示されました。
感想
不確実性を扱うことで、より現実的で柔軟な制御システムを構築できる可能性を感じました。自動運転やロボットの制御においても、これらの技術は非常に有望であり、今後の発展が期待されます。
というわけで、今回は以上です。大変お疲れ様でした。
引き続きで、徐々に発信していきます。
コメントや感想を受け付けています。ちょっとした感想でもいいので嬉しいです。
それでは、以上です。