ChatGPTやClaude、Geminiといった大規模言語モデル(LLM)の活用が急速に広まっています。
こうしたモデルの性能を最大限に引き出すために欠かせないのが「プロンプト設計」です。

しかし、ここで注意したいのは「内容(コンテンツ)」だけに目を向けるのでは不十分であるという点です。
なぜなら、同じ意味でも書き方(書式)を少し変えただけでモデルの応答精度が大きく変化するためです。

これは、LLMが非常に書式に敏感な性質を持っているためであり、近年ではモデルごとに“好む書式”が異なるという事実も明らかになっています。
つまり、あるモデルで良い結果を出すプロンプトでも、別のモデルではうまく機能しないのです。


目次

CFPOとは何か?

内容と書式を一体的に最適化する新手法

Microsoftなどの研究チームが開発した CFPO(Content-Format Integrated Prompt Optimization) は、
プロンプトの「内容」と「書式」を同時に最適化する画期的なアプローチです。

従来手法は主にプロンプトの内容に焦点を当てていました。
しかしCFPOは、内容と書式を「切り離さず」、それぞれが相互に影響し合うことを前提に設計されています。

この手法の最大の特徴は、最適な内容・最適な書式の組み合わせを自動的に探索・評価できる点です。


方法の紹介

CFPOにおける最適化プロセスの構成

CFPOの最適化は大きく以下の2ステップに分かれます。


① Component-wise Content Optimization(内容の最適化)

  • ケース診断(Case-diagnosis)と修正

    • モデルが失敗した問題を分析し、どう改善すればよいかフィードバックを適用。

  • モンテカルロサンプリング

    • 問題の構成要素をランダムに変えてバリエーションを生成。

これにより、多様なプロンプト内容を生成し、それらをスコアリングして最適な候補を選び出します。


② Format Optimization(書式の最適化)

  • 書式プール(Format Pool)から選択

  • モデルが提案する新しい書式を追加

  • 実行結果に基づきスコアリングして良いものを残す

  • 書式ごとの有効性(Q値)を更新

これらのプロセスをビームサーチ的に繰り返し
内容×書式の最適なペアを探索していく仕組みです。


分析結果と視覚化

書式による性能差の可視化

以下のグラフを見てください。

📊 図1 (A) では、同じ内容でも「書式」が違うだけでモデルの精度(Acc Score)が大きく異なることが分かります。
特に LLaMA-3-8B-Instruct では、最適な書式と最悪な書式で正答率に60%以上の差が生じています。

📈 図1 (B) では、内容と書式の組み合わせによって精度がどのように変動するかが3Dで示されており、
まさに「内容と書式は独立ではなく、複雑に絡み合っている」ことが一目で分かります。


構造化プロンプトテンプレートとは

プロンプトを機能別に分解して最適化

CFPOではプロンプトを以下のような構成要素に分割し、それぞれに対して最適化を行います。

  • Task Instruction(タスクの指示)

  • Task Detail(補足説明)

  • Output Format(出力の形式)

  • Few-shot Examples(例題)

  • Query(質問文)

📘 このような構造化された設計により、
内容と書式の両方を細かく制御・評価することが可能になります。


書式最適化の重要性とは?

内容だけじゃ足りない、「どう書くか」で性能が決まる

LLM(大規模言語モデル)の応答性能は、問いかける“内容”だけでは決まりません。
実はそれと同じ、いやそれ以上に重要なのが**書式(フォーマット)**です。

🧠 たとえば、
「質問と回答の区切り方」
「見出しや強調の使い方」
「マークダウンかHTMLか」

――こうしたわずかな違いが、モデルの正答率に大きく影響を与えます。
その理由は、LLMは「書かれ方」に非常に敏感だからです。

この事実を踏まえ、Microsoftなどが提案したのが「内容」と「書式」を一体的に最適化する手法:
**CFPO(Content-Format Integrated Prompt Optimization)**です。


方法の紹介

書式最適化の仕組みとプロセス


書式プール:多様な書式の集合体

CFPOでは、あらかじめ多数の書式候補を**書式プール(Format Pool)**として用意します。
このプールは以下の二つの観点から構成されます:

📘 Prompt Renderer(プロンプトレンダラー)

  • プロンプト全体の構造を定義

  • 形式例:Plain Text / Markdown / HTML / LaTeX / JSON / XML

🔶 Query Format(クエリフォーマット)

  • 質問と回答の提示形式を規定

  • 形式例:Input-Output, COT形式, 選択肢形式など

たとえば、
Markdown × COT形式、HTML × Input-Output形式など
Renderer × Query Format の組み合わせで多彩なプロンプトスタイルが生成されます。


書式のスコアリングと選択

各書式は、モデルに適用された後、出力精度(Acc Score)などの指標で評価されます。
そのスコアに基づき、次に試すべき書式の候補を絞り込んでいきます。

このとき活用されるのが、**UCT(Upper Confidence bounds applied to Trees)**という探索アルゴリズムです。

✅ UCTの特徴:

  • 高性能な書式を優先的に再試行

  • まだ試していない書式も適度に探索

  • 効率よく“当たりの書式”を見つけ出せる


LLMによる新規書式の自動生成

CFPOでは、初期の書式プールに加えて、LLM自身が新しい書式を生成します。
たとえば、

  • 質問と回答の区切りを「Q:」「A:」から「[Question]」「[Answer]」に変更

  • 大文字や装飾(太字コード風)を追加

  • フォーマット間の順序を変える(例:先に例題、あとで指示)

このような書式の工夫を、モデルが自動で提案し、評価・採用するプロセスが含まれています。


内容最適化との統合プロセス

CFPOは、「内容」と「書式」の最適化を交互に繰り返すアプローチを取ります。

ステップ概要:

  1. 内容最適化

    • ケース診断(Case Diagnosis):モデルの失敗要因を分析

    • モンテカルロサンプリング:多様な表現を自動生成

  2. 書式最適化

    • 書式プール+LLMによる新規提案を試行

    • UCTで最適な書式を選定

  3. 評価スコアで生き残った内容+書式の組み合わせを採用

  4. 次のループへ(再度内容・書式を改良)

このプロセスを繰り返すことで、内容と書式が最も調和したプロンプトが見つかります。


書式の表示例

書式によってこう変わる!具体的なフォーマットと表現

📌 下記の例は、同じ内容を異なる書式で提示したケースです:


Markdown + COT形式

### Instruction:
Explain how to solve the problem.

### Response:
Let’s think step by step. First...

HTML + Human-AI形式

Examples

Human: What is 5+3?

AI: The answer is 8.


LaTeX + Input-Output形式

\section*{Input}
What is the square root of 16?

\section*{Output}
4

このように、見た目や構造の違いが、モデルの応答内容や精度に影響を与えます。
CFPOは、この違いを活用して性能の最大化を図ります。

実験によるCFPO検証

統合的プロンプト最適化は本当に有効なのか?

LLM(大規模言語モデル)の性能を最大限に引き出すために開発された「CFPO」。
その実力を評価するために、多様なタスク複数のモデルを用いた大規模実験が実施されました。

目的はただ一つ――
CFPOは本当に、どんなモデル・タスクでも効果を発揮できるのか?
この問いに、定量的なデータで答えるための検証です。


方法の紹介

実験設定と対象モデル・タスクの概要

📌 タスクの種類

  • GSM8K:中学数学レベルの計算と論理的推論

  • MATH-500:高度な数学問題に対する論理的解答

  • ARC-Challenge:常識を活用した選択肢推論

  • Big-Bench Classification(BBC):テキスト分類のベンチマーク

これらは、異なる認知スキル(計算、推論、分類)を測定するために選ばれています。


🧠 モデルの種類

  • Mistral-7B-v0.1:事前学習のみ

  • LLaMA-3.1-8B:非インストラクション特化型

  • LLaMA-3-8B-Instruct:命令追従に強化されたモデル

  • Phi-3-Mini-Instruct:軽量だが命令対応に優れたモデル

これにより、「基礎モデル」と「調整済みモデル」の両方に対する汎用性を検証できます。


⚙ GPT-4による最適化コントロール

  • プロンプトの内容・書式の生成と評価は、GPT-4が担当

  • 最適化サイクルを複数回まわして、最良プロンプトを導出


実験結果とその解釈

CFPOは本当に効果的なのか?定量データで徹底検証

📈 下記の表から分かるように、CFPOはすべてのタスク・モデルで最高性能を記録しました。


✅ GSM8K(数学推論)

  • LLaMA-3.1-8Bで 63.38%(Baselineは50.03%)

  • Phi-3-Mini-Instructで 89.16%(最も高いスコア)

✅ MATH-500(難解数学)

  • LLaMA-3.1-8Bで 26.99%

  • Phi-3-Mini-Instructで 44.20%(大幅向上)

✅ ARC-Challenge(常識選択)

  • Mistralで 79.35%、LLaMA-3で 80.63%

✅ BBC(分類タスク)

  • LLaMA-3.1-8Bで 90.00%

  • LLaMA-3-8B-Instructで 91.00%(すべての手法中最高)


各要素の影響に関する分析

内容・書式・探索手法のそれぞれが性能にどう影響するか?


① 内容最適化 vs 書式最適化の比較

手法 GSM8K (LLaMA-3.1-8B) BBC
ProTeGi(従来手法) 54.74 81.00
CFPO_c(内容のみ) 58.07 85.00
CFPO_c + Format(書式最適化あり) 61.94 88.00
CFPO(統合) 63.38 90.00

内容だけでなく書式も最適化した方が、最大+5ptの向上が見られます。


② 書式の自動生成機能の効果

手法 GSM8K BBC
書式生成なし 62.70 88.00
書式生成あり 63.38 90.00

✨ 書式を自動生成するだけでスコアが伸びることが実証されました。


③ UCT探索 vs ランダム・貪欲法

探索法 GSM8K BBC
ランダム 62.40 88.00
UCT (α=0) 63.23 89.00
UCT (ours) 63.38 90.00

🔍 最適な書式選定のためには、UCTのような探索アルゴリズムが非常に有効であることが判明しました。


結論・まとめ

CFPOは全モデル・全タスクにおいて最高精度を達成
✅ 内容最適化と書式最適化の「統合」が鍵
✅ 書式を自動生成する機能も、精度向上に寄与
✅ 探索にはUCT法が最も効率的で高性能
✅ 特に「数学推論」「分類タスク」においてCFPOの効果が顕著


感想

この結果から、今後のプロンプト設計において「書式の最適化」は必須の工程になると言えるでしょう。
「何を聞くか」だけでなく、「どう聞くか」によってAIの出力がここまで変わるのです。

CFPOのような手法を用いれば、モデルの種類やタスクの難易度に関係なく、
一貫して高精度なパフォーマンスを引き出せることが証明されました。

🔧 プロンプト設計に悩んでいる方も、CFPOを参考に書式調整を意識してみてください。
「構造」と「見た目」が変われば、AIの応答も劇的に変わるかもしれませんよ。🚀

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