大規模言語モデル(LLM)を活用したアプリケーション開発を支援するフレームワーク LangChain。
その中でも、グラフ構造を用いたワークフローを構築できる LangGraph は、多くの開発者から注目されています。
特に 「並列実行」 はLangGraphの大きな特徴の一つですが、
適切に理解していないと 「思った通りに動かない」「Stateの管理がうまくいかない」 という問題に直面します。
本記事では、以下のポイントを 初心者にもわかりやすく詳細に解説 します。
✅ LangGraphとは?基本の仕組みを解説
✅ Nodeの並列実行の仕組み—LangGraphはどのように並列処理するのか?
✅ Stateのマージの仕組み—並列処理後のデータ統合はどうなる?
✅ Reducerの役割と必要性—並列処理でエラーを防ぐための対策
✅ 実際のコードを用いた詳細な解説とデバッグ方法
これを読めば、LangGraphの並列実行を 確実に理解し、エラーなく実装するための知識 を身につけることができます!💡
【本記事の目次】
1. LangGraphとは?並列処理が可能なワークフローフレームワーク
LangGraphは、LangChainの拡張ツールの一つであり、ノードベースのワークフローを構築できるフレームワーク です。
このフレームワークを利用することで、複雑な処理を「グラフ」として表現し、
分岐・並列実行・データ統合を柔軟に管理 できます。
🔹 LangGraphの特徴
- 直列・並列処理の両方に対応
- State(状態)を持ち、それをノード間で受け渡し可能
- データのマージや更新にはReducerが必要
- 実行フローを簡単にデバッグできる
特に 「並列処理」 に関しては、LangGraphがデフォルトで分岐を並列実行する 仕組みになっているため、
開発者は意識しなくても並列処理を利用できます。
しかし、「どのような単位で並列処理されるのか?」「Stateのマージはどのように行われるのか?」と
いったポイントを理解していないと、意図しない挙動 になってしまうこともあります。
そこで、次のセクションから LangGraphの並列実行の挙動を詳細に解説 していきます!
2. Nodeの並列実行とは?LangGraphにおける並列処理の仕組み
LangGraphでは、グラフ内で分岐があると、それぞれのノード(Node)が並列実行されます。
例えば、以下のようなシンプルなグラフを考えてみましょう。
🔹 並列実行するグラフの例
start_node
|
-----------------
| | |
node_a node_b node_c
| | |
-----------------
|
end_node
このグラフをLangGraphのコードで表現すると、以下のようになります。
from langgraph.graph import StateGraph
from operator import add
from typing_extensions import TypedDict
from typing import Annotated
import time
class State(TypedDict):
path: Annotated[list[str], add]
graph_builder = StateGraph(State)
def start_node(state: State) -> State:
return { "path": ["start_node"]}
def node_a(state: State) -> State:
time.sleep(3) # node_aの処理を意図的に遅延
print("log ----> a start")
return { "path": ["node_a"]}
def node_b(state: State) -> State:
print("log ----> b start")
return { "path": ["node_b"]}
def node_c(state: State) -> State:
print("log ----> c start")
return { "path": ["node_c"]}
def end_node(state: State) -> State:
return { "path": ["end_node"]}
graph_builder.add_node("start_node", start_node)
graph_builder.add_node("node_a", node_a)
graph_builder.add_node("node_b", node_b)
graph_builder.add_node("node_c", node_c)
graph_builder.add_node("end_node", end_node)
graph_builder.set_entry_point("start_node")
graph_builder.add_edge("start_node", "node_a")
graph_builder.add_edge("start_node", "node_b")
graph_builder.add_edge("start_node", "node_c")
graph_builder.add_edge(["node_a", "node_b", "node_c"], "end_node")
graph_builder.set_finish_point("end_node")
graph = graph_builder.compile()
graph.invoke({'path': []})
🔹 実行結果(ログ)
log ----> b start
log ----> c start
log ----> a start
{'path': ['start_node', 'node_a', 'node_b', 'node_c', 'end_node']}
ここで重要なのは、node_a の処理を待たずに node_b と node_c が並列で実行されている ことです。
これは、LangGraphの並列実行の基本動作になります。
3. 並列実行の順序とStateのマージの仕組み
並列実行が行われた場合、Stateの統合(マージ)はどのように処理されるのか?
この点を理解することは、LangGraphを活用する上で非常に重要です。
LangGraphでは、並列処理が終わった後、全ての分岐の結果を統合して次の処理に渡す 仕組みになっています。
例えば、以下のようなNodeの流れを考えます。
start_node
|
(並列実行)
| | |
a1 b1 c
| |
a2 b2
|
b3
|
end_node
この場合、a1, b1, c が並列実行され、完了後に a2, b2 が実行される という順序になります。
つまり、LangGraphの並列実行は、「1ステップごとに並列処理が行われる」 というルールになっています。
4. 並列実行時のStateにはReducerが必要
並列実行の際、Stateの管理には Reducer(集約関数) が必要になります。
Reducerを指定しないと、Stateの更新が単純な「上書き」になってしまい、データの統合が正しく行われません。
例えば、次のように path
を list
ではなく str
にするとエラーになります。
class State(TypedDict):
path: str
このような場合、LangGraphは 「Reducerがないため、複数のNodeのStateをどう統合すればよいかわからない」 という
エラーを発生させます。
この問題を解決するためには、Reducerを適切に設定する 必要があります。
まとめ
✅ LangGraphはデフォルトで並列実行を行う
✅ 並列実行はステップ単位で処理される
✅ Stateの統合にはReducerが必要
LangGraphの並列処理を正しく理解し、エラーを防ぎながら実装を進めましょう! 🚀