〜生成AIで質の高い問題をつくるために、私たちがすべきこと〜
AIが文章を書き、画像を生み出し、コードを書く時代。
その流れは、いよいよ**「クイズを作る」**という分野にまで到達しました。
とはいえ——
「AIが作るクイズって信用できるの?」
「内容が浅すぎたり、ピント外れだったりしない?」
「間違った知識が含まれてたらどうするの?」
そんな疑問を持つのも当然です。
本記事では、そんな不安を乗り越え、AIで”本当に使える”クイズを自動生成する最新手法を、徹底的に解説します。
https://doi.org/10.48550/arXiv.2503.14662
- 1 なぜクイズ作りは難しいのか?
- 2 LLMの限界と可能性:ハルシネーション問題とは?
- 3 鍵を握るのは「外部知識」と「概念抽出」
- 4 どのようにクイズを生成するのか?
- 5 応用力のあるクイズへ:難易度・対象別に調整可能
- 6 クイズを自動で作るプロンプト|教育レベル・分野別にカスタマイズ
- 7 クイズの質を評価するプロンプト|5つの評価指標で多角的に分析
- 8 クイズ同士を比較評価する方法|A/Bテスト型プロンプト
- 9 実験の目的|クイズの「質」を可視化するために
- 10 実験の構成|AIがAIを評価する時代へ
- 11 使用モデルと技術スタック
- 12 アブレーション実験|各要素の“貢献度”を明らかにする
- 13 実験結果|ConQuer手法は本当に優れていたのか?
- 14 結論|クイズ生成は「構造」こそが命
- 15 感想・コメント歓迎!💬
なぜクイズ作りは難しいのか?
まず前提として、クイズは「一問一答」では終わりません。
本当に良質なクイズには、3つの条件が必要です。
-
文脈を理解した深みのある問い
-
誤答にも意味がある選択肢設計
-
学びを促す構造(記憶の定着や誤解の修正)
つまり、適当にキーワードを拾って問題文を作るだけでは、「それっぽいだけ」のクイズになってしまうのです。
LLMの限界と可能性:ハルシネーション問題とは?
LLM(大規模言語モデル)は、膨大なデータを元に自然な文章を生成します。
ただし、最大の落とし穴があります。
それが、「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれる現象。
つまり、事実に基づかない内容を、それっぽく書いてしまうという問題です。
特にクイズでは、正誤が重要です。
一文字でも事実と異なれば、学びの質を大きく損なうリスクがあります。
鍵を握るのは「外部知識」と「概念抽出」
ここで登場するのが、**検索拡張型生成(RAG:Retrieval-Augmented Generation)**というアプローチです。
RAGでは、AIが手元の知識だけでなく、外部データベース(例:Wikipedia)から最新情報を取得し、それを踏まえて回答や問題文を構成します。
これにより、以下のような強みが生まれます。
-
知識の正確性が向上
-
質問の意図に即した文脈構築が可能
-
クイズとして成立するストーリー性が生まれる
加えて、この研究では単なるキーワード抽出ではなく、**問いの裏にある“重要な概念”**を自動で見抜くアルゴリズムが使われています。
どのようにクイズを生成するのか?
この仕組みは、以下のような手順で動きます。
① 問いを入力する
たとえば「植物が日光を得られないとどうなるか?」というような自然な文章。
② LLMが“重要な概念”を抽出
この問いから「光合成」「成長」「環境ストレス」といったキーワードだけでなく、隠れた概念まで見抜きます。
③ 関連知識を外部から取得
Wikipediaなどから、類似性の高い情報をAIが検索して抽出。
④ 取得した情報をAIが要約
過剰な情報をカットし、必要な部分だけを整理してまとめます。
⑤ クイズとして再構成
「設問・正解・誤答」をセットにした形式で、クイズを完成させます。
応用力のあるクイズへ:難易度・対象別に調整可能
この手法がすごいのは、単にクイズを作るだけではなく、
教育レベルや分野ごとに難易度調整が可能という点。
実際の研究では、
-
小学生
-
高校生
-
大学院生(博士課程)
といった異なる教育段階に応じて、最適な問いの設計ができるかどうかを検証しています。
このアプローチが広まれば、学校教育・リスキリング・企業研修まで、あらゆる「学びの場」で活躍することでしょう。
クイズを自動で作るプロンプト|教育レベル・分野別にカスタマイズ
クイズをLLMに生成させる際、適切なプロンプトがなければ**“それっぽいだけのクイズ”**ができあがってしまいます。
そこで、実際の研究や実験で使われた、構造化されたプロンプトテンプレートがこちら👇
🎯 クイズ生成プロンプト(日本語版)
あなたは**クイズ生成器(Quiz Generator)**です。
学生は現在、「{level}レベル」で「{area}」を学習中で、次の質問をしています:
「{question}」
あなたの役割は、学生がこの質問をより深く理解できるように、Wikipediaの要約情報に基づき、3つのクイズを作成することです。
-
各クイズは、**1問1答式(4択)**で構成してください。
-
選択肢Aは必ず正解である必要があります。
-
正解は、必ず参考情報に基づき、根拠が明確であること。
例:
Student Question: 北京はどこにありますか?
[Quiz]
Quiz: 中国の首都はどこですか?
A. 北京
B. 成都
C. 上海
D. 杭州
[Quiz]
Quiz: 北京が位置する大陸はどれですか?
A. アジア
B. ヨーロッパ
C. アフリカ
D. 北アメリカ
このテンプレートを活用すれば、対象の分野や教育段階に応じた高精度クイズが自動で生成できます。
クイズの質を評価するプロンプト|5つの評価指標で多角的に分析
生成されたクイズが「本当に教育に効果があるのか?」を判断するために、5つの観点からクイズを評価する仕組みも提案されています。
🧠 クイズ評価プロンプト(日本語版)
次の基準に従って、1〜5点のスコアを付けて評価してください👇
-
Educational Value(教育的価値)
→ 学習効果があるか?理解が深まるか? -
Diversity(多様性)
→ 様々な視点や概念をカバーしているか? -
Area Relevance(分野の関連性)
→ 学生の質問と学習テーマに合っているか? -
Difficulty Appropriateness(難易度の適切さ)
→ 学習段階にマッチしているか? -
Comprehensiveness(包括性)
→ トピックの深さと広がりが十分か?
🔍 出力形式(JSON)
{
"Educational Value": 4,
"Diversity": 3,
"Area Relevance": 5,
"Difficulty Appropriateness": 4,
"Comprehensiveness": 4
}
この評価ロジックを組み込めば、AIが作ったクイズの品質を数値で比較可能になります。
特に、学習アプリや教育DXのプロダクト開発においては、学習設計(インストラクショナルデザイン)と組み合わせて活用可能です。
クイズ同士を比較評価する方法|A/Bテスト型プロンプト
さらに精度を高めたいなら、複数のクイズセットを比較して、どちらがより良いかを判断する評価プロンプトも用意されています。
🆚 クイズ比較評価プロンプト(日本語版)
学生が質問:「{question}」
次の2つのクイズセット(quiz_set_1 / quiz_set_2)が提示されています。
以下の5つの基準について、どちらのセットが優れているかを比較してください:
-
Educational Value(教育的価値)
-
Diversity(多様性)
-
Area Relevance(分野の関連性)
-
Difficulty Appropriateness(難易度の適切さ)
-
Comprehensiveness(包括性)
✅ 出力フォーマット(JSON)
{
"Educational Value": 2,
"Diversity": 1,
"Area Relevance": 2,
"Difficulty Appropriateness": 2,
"Comprehensiveness": 2
}
この形式により、プロンプトやモデルの改善前後の効果比較が一目で分かるようになります。
A/Bテストやユーザー評価と組み合わせて使えば、最適な学習設計を高速でPDCAできるのが最大の利点です。
実験の目的|クイズの「質」を可視化するために
高品質なクイズとは、単に正解を選ばせるものではありません。
知識を再構築させ、学びの促進を支える設計が求められます。
そこで、本研究では以下の5つの評価基準を用いて、クイズの教育的効果を測定しました。
📊 評価基準(5項目)
-
教育的価値(Educational Value)
▶ 学びが深まり、新しい理解が得られるか? -
多様性(Diversity)
▶ 異なる視点や複数の概念が含まれているか? -
内容の関連性(Area Relevance)
▶ 質問とクイズがどれだけ整合しているか? -
難易度の適切さ(Difficulty Appropriateness)
▶ 学生のレベルに合っているか? -
包括性(Comprehensiveness)
▶ その分野をどれだけ深く広くカバーできているか?
実験の構成|AIがAIを評価する時代へ
本研究では、生成されたクイズの品質をGPT-4oが審査官として評価。
LLM自身が「教育的なクイズとは何か」を判断するという、AIによるAI評価の構造です。
さらに、単体評価に加えてクイズセット同士の比較評価(A/Bテスト)も実施。
評価順序を変えた複数のペア比較から平均スコアを算出し、公平性を担保しました。
使用モデルと技術スタック
本研究では、以下のAI技術が活用されました。
-
クイズ生成モデル:GPT-4o-mini、Gemini-2.0-flash
-
外部知識ソース:Wikipedia
-
意味的類似性抽出:
text-embedding-3-large
(OpenAI) -
概念抽出モジュール:入力文から隠れた重要キーワードを特定
-
要約モジュール:大量の知識を簡潔に整理し、クイズ化を容易に
アブレーション実験|各要素の“貢献度”を明らかにする
単に「うまくいった」で終わらせないのが、今回の研究の凄さです。
提案手法の中から、特定のモジュールを取り除いた状態でクイズ生成を実施し、どの要素がどれだけ効果に寄与しているかを分析しました。
🔍 各要素の影響
-
概念抽出モジュールなし
→ 質問に「光合成」が必要な場合でも、キーワードが拾われず、浅い設問に。
→ 教育的価値・関連性・包括性が大きく低下。 -
WikipediaをConceptNetに変更
→ 知識が浅くなり、内容が表面的に。
→ 難易度と関連性が低下する傾向。 -
要約モジュールなし
→ クイズが情報過多になり、焦点がぼやける。
→ 誤った方向性のクイズが生まれやすくなった。
実験結果|ConQuer手法は本当に優れていたのか?
ConQuerとは、本研究で提案された概念抽出 + 外部知識 + 要約 + LLM生成を組み合わせたフレームワークの名称です。
📈 絶対評価の結果
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ConQuerによるクイズのスコアは、全評価軸でベースライン(従来手法)を上回る
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平均スコアは4.8%向上
🔄 ペア比較評価の結果
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77.52%のケースで、ConQuerがベースラインより高評価
-
単体評価では大きな差がなくても、比較すると差が明確に浮き彫り
✨ なぜConQuerの方が優れていたのか?
-
単語ベースでなく**“概念ベース”で生成された設問**
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Wikipedia由来の信頼性ある情報に裏打ちされた正答
-
情報が整理されており、問いとしての構造が明確
つまり、ConQuerによって生まれるクイズは、見た目ではなく中身が違うのです。
結論|クイズ生成は「構造」こそが命
AIにクイズを作らせるなら、「とりあえず生成」は卒業しよう。
重要なのは、以下の4ステップを押さえることです。
✅ クイズ生成の鉄則(ConQuerフレーム)
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問いの裏にある重要概念を抽出する
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意味的に関連する外部知識を取得する
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情報を整理・要約して焦点を定める
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構造化されたプロンプトでクイズを生成する
感想・コメント歓迎!💬
あなたの教育現場や自学習に、この手法はどう役立ちそうですか?
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「eラーニングで即使いたい」
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「教育データ分析と組み合わせたい」
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「AI×プロンプト設計、面白い!」
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