2024年後半から2025年にかけて、
AIは「会話をする存在」から「考えて調べる存在」へと進化しつつあります。
OpenAIが発表したDeep Research機能は、トピックに対して自律的にリサーチを行い、
構造化されたレポートを出力するという画期的な仕組みでした。
そして現在――
「この機能をAPIとして自作し、システムに組み込みたい」というニーズが急増しています。
そこで注目されているのが、LangChain製のオープンソースプロジェクト「OpenDeepResearch」。
本記事では、OpenDeepResearchの概要から、API化の実装手順・設計思想・構成ファイルの解説、
さらに今後の応用アイデアやカスタマイズの方向性まで、徹底的に掘り下げて解説します。
- 1 OpenDeepResearchとは何か?|Deep Research OSS版の中身を分解する
- 2 API化の背景とメリット|なぜAPIで使うべきなのか?
- 3 実装構成の全体像|OpenDeepResearch + FastAPIでつくるシステム構成図
- 4 graph.pyの技術的内訳|LangGraphエージェントの構成と実行フロー
- 5 出力レポートの実例|生成される文章構成のモデル
- 6 応用シナリオ|どう使えば最大限の効果を発揮できるか?
- 7 今後の課題と進化可能性|resume_commandの最適化とハルシネーション対策
- 8 結論|OpenDeepResearchは「調査の自動化」の本命OSSである
OpenDeepResearchとは何か?|Deep Research OSS版の中身を分解する
OpenDeepResearchは、LangChainおよびLangGraphによって開発されたリサーチ自動化エージェントです。
簡単にいえば、
「プロンプトを渡せば、AIが**調査計画を立て、検索し、まとめてレポートにしてくれる」**ツール。
しかしその裏側では、以下の4つの要素が精緻に連携しています。
① Planner(調査計画の立案)
-
ユーザーが指定したトピックに対して、AIがどのような視点で分解するかを自動決定。
-
使用モデル:
openai/o3-mini
② Retriever(情報収集)
-
LangChainの検索ノードを通じて、TavilyなどのAPIから信頼できる最新情報を取得。
-
一部、検索ソースの信用性フィルタリングも可能。
③ Analyzer(指示の適用・調整)
-
resume_command
で、途中からの修正・追記・リサーチ方向の変更を可能に。 -
調査の粒度・視点の切り替えに活用。
④ Reporter(構造化レポート出力)
-
Claude 3 SonnetなどのLLMでレポートを自然言語生成。
-
Markdown形式での保存に対応、表やリストで読みやすさも担保。
API化の背景とメリット|なぜAPIで使うべきなのか?
「ノートブックで動くならそれでいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、API化するメリットは絶大です。
✅ 業務ツールへの組み込み
FastAPIで構築したREST APIなら、以下のような使い方が可能になります。
-
Slackからリサーチ実行→レポート送信
-
Notionに自動投稿
-
MTG前にGoogleカレンダー連動でリサーチ実行
✅ ワンクリック実行 & ノンコード連携
Zapierやn8nと組み合わせれば、ノンプログラマーでも
「ある条件で自動リサーチ→保存」などのオートメーションが可能に。
✅ 再利用性とテスト性の確保
一連の処理をAPI化すれば、CI/CDパイプライン内での自動テストやパラメータ調整も実施可能になります。
実装構成の全体像|OpenDeepResearch + FastAPIでつくるシステム構成図
Client
│
├─▶ FastAPI (/run_search?topic=...&resume_command=...)
│
├─▶ run_graph() 実行(非同期)
│
├─ LangGraphエージェント構成(builder)
├─ Planner:OpenAI
├─ Retriever:Tavily
├─ Writer:Claude
└─ MemorySaver:状態保持
│
└─ 最終レポートをMarkdown保存 + APIレスポンスで返却
main.pyの詳細解説|FastAPIエンドポイントの仕組み
@app.get("/run_search")
async def root(topic: str, resume_command: str):
report = await run_graph(topic=topic, resume_command=resume_command)
return {"message": f"リサーチ完了:{topic}", "report": report}
このエンドポイントでは、トピックと追加指示を受け取り、
非同期でグラフを起動し、完了後にレポートを返却します。
シンプルでありながら、高度なプロンプトエンジニアリングも可能な設計です。
graph.pyの技術的内訳|LangGraphエージェントの構成と実行フロー
run_graph()
は、以下のステップで動作します。
ステップ1:トピックに基づくリサーチ計画の生成
-
AIがどのような視点で分解するかを決定
-
例:「市場構造」「課題」「注目領域」など
ステップ2:Web検索と知識抽出(Tavily API)
-
実際に検索を行い、精度の高い情報を収集
-
深掘り度(max_search_depth)はパラメータで制御可能
ステップ3:resume_commandによる指示の適用
-
「もう少し具体的な市場規模を」「最近の日本企業の事例も追加して」
-
といった中間指示が反映され、調査の方向が変化
ステップ4:レポート生成(Markdown + Claude)
-
Claude 3 Sonnetが構造化レポートを生成
-
セクションごとに明確に分かれたMarkdown形式
出力レポートの実例|生成される文章構成のモデル
# 最終報告書
## 1. はじめに
- トピックの背景と目的
## 2. 本論
- 小見出し1:市場規模
- 小見出し2:注目分野
- 小見出し3:競合分析
## 3. まとめ
- 表形式で要点整理
- 今後の展望と課題
このように、構造化+読みやすさが考慮されたドキュメントが自動生成されます。
応用シナリオ|どう使えば最大限の効果を発揮できるか?
✅ MTG前自動リサーチ(カレンダー連携)
-
会議予定から参加企業を抽出
-
自動リサーチ → レポートを送信(Slack / メール)
✅ 営業支援ボット(社内ナレッジ統合)
-
顧客情報を入力 → 業界情報や課題を提示
-
CRMと連携すれば、提案書作成にも活用可能
✅ 研究リサーチ支援(論文要約 + 関連技術調査)
-
指定した論文タイトルを渡せば、その周辺の技術背景や類似研究も掘ってくれる
今後の課題と進化可能性|resume_commandの最適化とハルシネーション対策
現状の課題としては以下のような点が挙げられます。
⚠ resume_commandの解釈が曖昧になるケース
→ 指示テンプレートの標準化や、GUIでの補助が必要
(例:「調査軸の追加」「時系列データを含める」など)
⚠ ハルシネーション発生リスク
→ 出典URLの明示化、トークン制限、信頼性スコアリングなどの導入検討が必要
結論|OpenDeepResearchは「調査の自動化」の本命OSSである
OpenDeepResearchを使えば、
「AIに調べてもらい、自分は意思決定に集中する」未来がすぐそこにあります。
✅ 調査を分解・収集・構造化できるフルスタックなエージェント
✅ API化することで、業務やサービスへの統合も可能
✅ LangGraph構造で処理の可視性・拡張性も抜群
あなたのチームにも、AIリサーチャーを1人追加しませんか?